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東京高等裁判所 昭和25年(ラ)21号 決定 1950年3月10日

抗告人 相手方 楠武夫

訴訟代理人 高木廉吉

相手方 申立人 株式会社昭文堂

主文

本件抗告はこれを棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告人は、原決定を取消す、本件異議申立を棄却するとの裁判を求め、抗告理由は左記の通りである。

原決定は本件差押に係る動産が相手方会社の占有に属し、且つ債務者萩原元亥以外の者(第三者)の所有に属することを、相手方提出の証拠により認め、本件異議申立を認容した。しかし、

第一、差押物件が第三者の所有又は占有に属すという理由に基き、強制執行の排除を求めんとせば、宜しく第三者異議の訴を提起すべきであつて、強制執行の方法に関する異議の申立をなすべきではない。

かかる申立をなすことにより強制執行の排除を求めることはできない。

第二、別紙目録の動産は、債務者萩原元亥の占有し且つ所有するものである。

第三、原決定は、冒頭記載の事実は相手方提出の証拠により、これを認めることができると判示しているが、」その援用した証拠が何であるかを個別的に挙示していないのは理由不備の違法がある。

よつて審按するに、本件記録によれば別紙目録記載の物件は、抗告人が執行債務者萩原元亥に対する東京法務局所属公証人大沢光吉作成第十二万二百四十八号金銭消費貸借公正証書の執行力ある正本に基き、東京地方裁判所執行吏平山宗一郎に委任し、昭和二十四年七月十六日、東京都千代田区神田錦町三丁目十六番地倉庫において差押えたものであるところ、記録中の疏第一乃至第六号証によれば、右差押物件所在の建物は昭和二十三年十二月二十七日相手方が右執行債務者から賃借してその階下を倉庫として使用していたものであつて、別紙目録記載の物件は総て相手方が第三者から預つて右階下の倉庫に保管して占有していたものであることが認められる。従つて執行吏が萩原元亥に対する強制執行として同人の占有にあるものとしこれが差押をしたのは違法で、この場合相手方は右差押の排除を求めるため執行の方法に関する異議の申立をなし得ることは勿論であるから(民事訴訟法第五四四条、第五六六条第一項参照)、本件異議申立は正当なりとして是認されなければならない。

抗告人の主張は、要するに、右と法律上の見解を異にし(抗告理由第一)或は右に認定した事実と相容れない事実を主張し(同上第二)また或は原決定の理由において採用した証拠を個別的に挙示しないのは違法であると主張するもので(同上第三)、その総てが採用に値しないものであることは前段の説明によつて明らかである。従つて、原決定は相当で本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用の負担については民事訴訟法第八十九条第九十五条の各規定により主文の通り決定する。

(裁判長判事 玉井忠一郎 判事 薄根正男 判事 山口嘉夫)

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